野村正人
Masato Nomura

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Profile
野村正人建築研究所 主宰
香川県善通寺市吉原町 554-5
1950 香川県善通寺市吉原町出身/血液型0型
1976 室蘭工業大学建築科卒業
坂倉建築研究所
1985 野村正人建築研究所設立、現在に至る
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DEAR

DEAR ANNEX

コミュニティ消防センター

片原町児童館公衆トイレ

やまうち美容室

PARK HILL

郷土館東側公衆トイレ

ラフィーネ ヒロ

水曜倶楽部

シエスタ観音寺
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高松の平野さんの友人である建築家・野村正人さんが善通寺市にいると紹介されて、「友達の輪」を辿って善通寺に向かう。善通寺市は私にとって未踏地のはずと記憶するが、通過したことくらいあるのかも知れない。善通寺市は、かつて軍都であった。今も自衛隊の駐屯地である。市役所の並びに、旧陸軍の社交クラブ「偕行社」がある。現在は郷土館に転用されている美しい建物である。その前で、野村さんと会う約束になった。早めに待合わせ場所に着いた。郷土館の東側に、とても洒落た公衆トイレがあった。善通寺は市役所や公民館始め、良質の近代、現代の建築が点在している街である。その公衆トイレも、そんな良質な建築の一つと言えた。少し待つと野村さんが現れた。色の浅黒い精悍な雰囲気を持つ中年男性である。挨拶をしてすぐに「あのトイレの設計者は誰?」と訊く。
「あ、あれ、私です」という返事が返って来た。これから見る彼の作品のレベルが計れた。
果てしなく優しかった平野さんの友人らしく、彼もまた心遣い十分な「紳士」であった。ネクタイを占め紳士然としていても、粗野で嫌な奴も世の中には多くいる。生まれも育ちもマシなのに、本人の性格最低という自称「上流社会出身の低俗人種」もいるから、人の判断は難しい。野村さんは、善通寺をくまなく案内してくれた。自衛隊の旧い施設群もゆっくり見た。これは、丸亀の建築家・多田善昭さんの尽力もあった。
野村さんの作品では、私は例の「郷土館東側公衆トイレ」が気に入った。「条理制と幾何学と自然の形を表現した」と野村さんはコンセプトを説明しているが、具体的にそれを理解する能力は私には無かった。ただ、「プロポーションの良いグッドデザインの楽しいトイレ」に見えた。それだけで評価に価した。私は、建築家の設計のコンセプトで作品の評価が左右されることは少ない。うっかりすると、面倒な論理はマイナス材料になることもある。作品を「見る、歩く」という単純作業のみで評価する。ただ、できれば設計者に会いたい、と思うのは、その人間性を覗こうとするからで、「作品は人なり」は外れた意見ではない。作品が格好良くても、あまりに人間的に「嫌な奴」は一切無視する、という独断と偏見で掲載作品を決定する私こそ、「嫌な奴」かも知れない。
「物を載せながら人を載せる」基本は忘れたくない。苦労するのは、「とても好人物なのに、作品のできが良くない」という人である。基本的には、作品の器量を優先するので、とても苦慮するところである。
そんな私の勝手からすれば、野村さんは申し分ない人物といえた。市民会館の近くに、野村さんの作品「やまうち美容室」がある。RC打放しの建物の中空にブリッジが見えた。ブリッジに立った時の「浮遊感」を表現したという。「水曜倶楽部」という在来木造工法で造られた店舗も見た。これは、木造の梁と石の組み合わせが成功している作品だった。昼食を彼の作品「DEAR」で摂る。彼の作品としては旧いものだが、飲食施設としては、変化のある楽しい作品となっていた。が、少しコチャゴチャした窮屈さが感じられる。使い方に繁雑なところがある所為かも知れない。料理は旨かった。その向かいに「DEAR ANNEX」がある。これもソツなくまとめられているが、強いて取材の食指が働くというものではなかった。
野村さんは、高校時代に丹下健三設計の香川県庁を見て、建築の素晴らしさに感動し、建築家への道を選択したという。若い時に、自分の方向を示される良質なものに巡り逢えることは、非常に幸せなことである。40、50になっても自分のしたいことに巡り合えない人間は多く、そのまま可も無し不可も無しの「退屈的通俗人生」で御臨終となる。私が写真に魅力を感じたのも高校時代で、キャパやブレッソン、土門拳といった写真家たちの仕事に見入った少年時代であった。野村さんは、その後、コルビジェやジェームズ・スターリング、ルイス・カーンに惹かれ、坂倉建築研究所に入所、10年間を過ごした。野村さんは、建築思想について以下のように語っている。
建築の幾何学、構成を大切にし、光、風など自然といかに調和するかを目指し、あくまでオーナーの難しい課題に対し、いかに新しい形を生み出せるかを課題にしています。また、その過程で近代建築を如何に解釈するかの作業を続けています。確かに、地方での活動の為、地方の風土に影響されていますが、その中に都市空間の魅力を盛り込むことに力を注いでいます。また、技術的には、基本となる在来工法(左官、大工、石工など)を大切に考えています。新しく、出会ったオーナーは、私に次なる学習の場を与えてくれる、それに挑戦していく事は私にとって歓びです。
言葉を選んで、確実に自己の意思を伝えながら、周囲の人達への配慮が感じられる、彼らしい語り口である。好きな建築作品を問うと、「ラ・トゥーレット修道院」「キンベルアートミュージアム」「ダンテウム」「レスターユ工科大学」の名があがった。野村正人さんの作品の良さは、シンプルデザインの上に、仄かに施された薄化粧の艶や楽しさだろう。建築家・安藤忠雄さんを始めとする打放しも全国に蔓延し、その良さもマンネリズムとなって久しい。RC打放しだけでは「またか…」と思うことしばしばである。RC打放し作品にレベル差もある。RC打放し+αを求めて止まないこの頃である。野村さんは、そんな私の欲求を満たしてくれる可能性を感じさせる人であった。
寒い四国を数日体験して、香川の旅を終わる。花見の頃に、また、四国の旅をしようと思いながら、善通寺を後にする。冬は、まだ長く四国の空に横たわり、桜の木々には蕾の膨らみらしきも見当たらなかった。
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WORKS
1986 DEAR 善通寺市原田町
1990 DEAR ANNEX 〃
善通寺市コミュニティ消防センター 吉原町
1992 片原町児童館公衆トイレ 文京町
1993 善通寺警察署増築 上吉田町
1994 やまうち美容室 〃
PARK HILL 原田町
大川地区公衆トイレ、炊事棟 多度津郡琴南町
琴参バス新整備工場 善通寺市大麻町
1995 郷土館東側公衆トイレ 文京町
善通寺第一高等学校プール、附属棟 〃
ラフィーネ ヒロ 高松市前田西町
1996 水曜倶楽部 善通寺市吉原町
シエスタ観音寺センターハウス 観音寺市本大町
1998 DEAR屋島店 高松市屋島西町
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