進藤哲雄
Tetsuo Shindo


Profile
進藤設計事務所 代表

1948 山梨県北巨摩郡小淵沢生れ
1972 東海大学建設工学科卒業
1975 進藤設計事務所入所
1991 進藤設計事務所代表取締役就任、現在に至る



光臨館



甲府市リサイクルプラザ



北東児童センター







富士ビジターセンター


甲州街道は、新宿から下諏訪に至る道である。雑誌・建築知識の連載もあって、山梨市あたりから下諏訪あたりまで、甲州路の建築採集旅をした。
山梨県というのは、東京を拠点に考えると、何となく信州への通過県という感じが強く、いま一つ魅力に欠ける県である。私の建築リストでも、質、量ともに関東・甲信越圏内では見劣りがする。桃や葡萄といった産物はあるが、桃狩りや葡萄狩りなどは、その面白さが全く判らない私にとっては、無縁のものであるから、仕事以外に山梨に行くことはなかった。しかし、桃の花の咲く頃に、中央道で北に向かう時など、遠く南アルプスを望む勝沼から甲府にかけての美しさは抜群である。

それでも、見ておきたい建築の幾つかはあった。山梨市のフルーツミュージアム(長谷川逸子さん設計)やアリア ディ フィレンツ(北川原温さん設計)などを見た。それから甲府で設計活動を続ける進藤哲雄さんを訪ねる。
進藤さんは、初見は取りつきにくい感じを受けるが、話しだすと丁寧で適格な口調で、穏やかである。品性のある人だった。言葉遣いは、人柄や知性を端的に示すと私は思っている。先日、亡くなった黒澤明監督が、大分前に、TVで若者とのトーク番組に出演していた時、「それでさぁ、あれでさぁ」言葉を話していた。しかも、横柄な話しぶりである。世界の黒澤?に親しみ易さなど望まない私は、この程度の人間だったかと落胆し、それ依頼、黒沢作品を一切見ないことにした。もっとも、七人の侍以上の作品はないとは、思っていたのだが…。

進藤さんも、やはり山梨県の建築に見るべきものが少ないことを嘆き、それは自分たちの力不足であるとも言う。建物の使い易さや、オーナーの意見などと、建築家の表現とのギャップにかなり苦慮している様子が窺えた。それは、進藤さんだけの問題ではない。彼の手掛けた甲府のリサイクルプラザや、韮崎の児童館、河口湖のビジターセンターを見る。どれも抜群とは言い難いが、進藤さんの感覚が窺い知れたし、楽しさがある建築たちだった。今後、この地域でのリードオフマンになって、若い建築家たちを引っ張り、行政を刺激して欲しい人である。そういう人物がいないと、とくに甲府という東京に近い街では、東京依存型になってしまい、少しマシなものを造ろうとすると、安易に東京の有名建築家に依頼するということになりかねない。どの世界でも、地元に有能な作家がいるということは理想的であるし、育てる努力を行政の人達も含めてしていかないと、中央からの出稼ぎ作家の手伝いで終わることになり、若い芽も伸び悩む。それは地域にとって幸せなこととは言えない。そう思いながら、甲州街道をさらに北に向かう。まだ、陽は高く、黄昏までに終点の下諏訪の宿に着きそうだった。


WORKS
1991 光臨館(小淵沢町・身曾木神社)
1993 旅館きこり別館「みずほ」(石和温泉)
1995 ケアハウス光の里(甲府市双葉町)
1996 甲府市リサイクルプラザ(甲府市上町)
    山梨市弁護士会館(甲府市中央)
1997 西山温泉慶雲館(早川・西山温泉)
    北東児童センター
1998 富士ビジターセンター(富士吉田市)


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