
中国領事館前派出所

市営若葉団地

県営大橋団地

長崎岩見地区職員住宅

三愛ビル

AXISビル21
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長崎は、仕事で馴染みのない県の一つである。手元にある長崎県の建築の写真は、雑誌・住宅建築の取材での五島列島の教会くらいである。それに、長崎市にある今井兼次さん設計、建築学会賞を受けた26聖人殉教記念館だけがある。
最近は、長崎港に高松伸さんや北川原温さん設計の建築なども増えて、楽しそうだ。
原爆の悲劇はあったものの、それでも旧い建築も多く残されていて、魅力的な街というイメージはある。
長崎市に着いた日は、11月というのに夏のように暑かった。暑さには、徹底的に弱い私は、その日、夕食に出る気力もおきなかった。翌日、建築家の大草一俊さんが、2人の若い所員を共にホテルに現れた。私より若いが、見掛けは年齢より落ち着いて見える。話し出すと、なかなか情熱的で若さがあった。これは、団塊の世代以上のおじさんに会った時に、時々、出会う印象である。若者に会った時は、この逆の印象が多い。「君は死んでいるのか」と問いたくなるような、生気のない若者の多いのは何故だろう。おじさんやおばさんも世の中の方程式にはまって生きている人は、自己のない魅力のない人間が多いことも事実である。大草さんは、そんな大人とは違って見える。私は、淡々としながらも、内側に豊かな情熱を溜めている人が好きである。大草さんの言葉遣いなどを聞いていると、粗野ではないし、望ましい人間の一人に思えた。
大草さんのBMWで、長崎のいくつかの建築を案内していただく。新旧様々だが、いつものように、旧いものに惹かれる。特に、神ノ島教会などは、周囲の雰囲気とともに痺れる建築だった。稲佐山の展望台に立つと、長崎の街が一望できた。
大草さんが説明してくれる。急峻な地形をかけ上がるように、集落が密集していた。大草さんの作品のいくつかも拝見した。作品は、集合住宅が多かった。大草さんは、東京の第一工房に暫く在席してから、故郷・長崎に帰って、事務所を開設している。大草さんの故郷での作品を、第一工房のボスの高橋さんが見て、「君は、媚びていないか」といわれたという。「媚びる」とは何を指していうのだろうか、と考える。相手の要望を考慮することは、媚びることなのだろうか。拒否して、手前勝手をして、使いにくい建築を創るのが素晴らしいことなのだろうか、できたものは、誰が使うのか、いつも考えさせられる問題である。その建築を見て、私も気になる所はあった。どうということではない、デザインの一部分が気に入らなかっただけのことである。所詮、好みの問題に尽きる。中国領事館前の派出所などは、なかなか楽しかった。
夜、大草さんの仲間7〜8人と会食した。ここでも、大草さんが年長者だが、一番元気に見えた。会食は、2時間ほどだっただろうか。帰りに、大草さんが宿まで送ってくれた。道すがら、旧い花街あたりを案内してくれた。暗闇に、おしろいの匂いが漂っているかのようだった。宴会は好きではない。最初から、大草さんと2人で、路地から路地を案内して歩いてみたかった。私の旅は、ひたすらさまよい、多くを見る事だけである。多くの人に会える楽しさよりも、その町の、多くの今と昔に会える魅力の方が優るのだ。
これから長崎で建築を目指す後輩たちの指針なって欲しい人だと、水銀灯の下で、にこやかに、おやすみなさいと挨拶する大草さんを見ながら、そう思っていた。
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