二宮正一
Syoichi Ninomiya

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Profile
二宮設計事務所 主宰
山形県長井市館町南17-19
1948 山形県出身
1975 東京芸術大学大学院修士課程終了
吉村順三設計事務所
1982 二宮設計事務所開設、現在に至る
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長井市致芳児童センター


やませ蔵美術館




丸大扇屋
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全国47都道府県の中でも、山形は好きな県に入る。長く近代建築に関わってきた私にとって、山形市や鶴岡市に残る近代のモダン建築たちは、その量や質で、楽しませてくれた。
加えて、芭蕉の「さみだれを 集めて早し 最上川」に代表される最上川沿いの風景も良い。若き日に憧れた写真家・土門拳さん生誕の地でもある。親しく交友した女性が山形出身だったり、と山形への想いは深い。
長井市に二宮正一さんという建築家がいる、と聞いて、それまで存在意識のなかった長井市を再認識させられる。「そんな市、山形のどこにあったっけ…」という失礼千万な認識であった。全く取材などのない街だったことも、認識しなかった理由である。しかし、かつて私が作ったリストには、長井市の建築が数件記録されているので、無印だったわけではなかった。長井市が米沢市からそう遠くないことを地図で確認。ともかく、二宮さんに会おう、と晩秋の奥州路に旅立つ。
長井市は、人口3万余りの、かつて上杉鷹山が育んだ集落である。長井市で唯一らしい高層建築「TAS」の入口で、二宮さんは待っていてくれた。雑誌の顔写真で見たときは、クセのある、ちょっと難しそうな印象を持ったが、会って見るとその印象は外れ、必要以上にニコニコはしないまでも、決して難しそうな人物ではなく、こちらに負担をかけない心遣いさえ見られた。
二宮さんは、代々建築に関わってきた家柄に生まれた。子供の頃から、建築関係の職につく、と決めていたようだ。米沢工業高校建築科から東京芸大に進み、吉村順三さんの事務所に入った。吉村さんは、二宮さんが憧れていた建築家であった。秀れた建築家を師にすれば、秀れた建築家になる、とは限らない。全く、その片鱗も窺えない人もいれば、師より良いのではないか、思える人もいる。けれど私は、師は誰であったか、ということもその人の作品を見る上での、資料の一つになることは確かだと思っている。二宮さんが、吉村さんの事務所にいたことは、私に「多分、良質」の先入観を持たせた。
二宮さんは、山形に帰ってから携わっている仕事に、古い建物の調査・保存・改修といった仕事がある。その仕事ぶりの成果が「やませ蔵」と「文教の杜」の扇屋等である。「やませ蔵」の応接間を拝見した時、二宮さんが、吉村事務所にいた人だったことを、再認識した。吉村事務所に入るきっかけも、ライトと遠藤新が手がけた「自由学園・明日館」という古い建築の実測調査に関わったことが縁になっている、と雑誌に記されている。明日館については、私も保存運動の会員として名を連ねたので、無縁ではない。
吉村順三さんとは、私は一度だけしかお会いしていない。名作といわれる吉村さんの軽井沢の別荘の居間で、1時間ほどお話した。25年ほど前のことである。その時は、建築知識の当時の編集長と一緒だったと思う。当時、ローコスト住宅が話題になっている時で、吉村さんは「ローコストは建築家の基本的な使命」とおっしゃった。「豪華なお宅も沢山設計されている」と編集長が突っ込むと、吉村さんは平然と「お金を使いたい人には使わせて、かけられない人に回してあげなければ、世の中不公平だよ」というようなことをおっしゃった、と記憶している。非常にまともで清潔な考えの持主だなぁ、との印象を持った。吉村さんの設計したお宅のダンロは、煙らずに良く燃える理由は…の問いに、「それは空気の流れを考えれば、自然に判ること」といった答えをされた記憶がある。吉村さんは、私にとっても、その作品性や、あの日の僅かな印象から、人間として建築家として、尊敬に足る人だと思ってきた。
数年前に話題になった「生産者の顔の見える米」は、消費者の不信感を拭い、生産者を勇気づけたが、この仕掛人は、他ならぬ二宮さんである。環境問題など地球全体の今を見据えて建築を思考し、建築だけにとどまらず、自然に近づいていこうとする二宮さんは、稀有な建築家の一人であることは確かである。彼の名刺には「建築+環境」とある。
陽が紅くなり、山の端にかかり始めると、北国の気温は急降下を始める。長井の隣り町白鷹町にある深山観音を見たい、という私を案内してくれ、それから私は山形市へ、二宮さんは長井へ、小さな町の辻で手を振って別れた。二宮さんの車が、バックミラーの中から消える。風のない澄んだ黄昏が、北国の街道に青く降り始めていた。
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WORKS
1988 米と自然の探求館 飯豊町
1989 長井市致芳児童センター 長井市
1991 やませ蔵美術館 〃
1993 山口讃居 飯豊町
1994 長井市平野地区公民館 長井市
1997 文教の杜・丸大扇屋 〃
長井市縄文そばの館 〃
1998 飯豊雪室 飯豊町
音楽家の家 白鷹町
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