Lloyd's of London Insurance Market and Offices
『ロイズ・オブ・ロンドン』1986 リチャード・ロジャース( Richard ROGERS )

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 パリのポンピドー・センターと並んで、リチャード・ロジャースの紛れもない最高傑作の一つで、ロンドンの金融街シティのど真ん中に聳え経つ銀色のタワーがそれである。石でできた中世の街路パターンを持つ街の中に忽然と建っているが、意外にも違和感はない。その反射性の質感と細部の量感が街並みに同化しているような錯覚を感じる。そして、夜になれば、青いライトアップが建物を浮かび上がらせる。

 この建物は世界的に有名なロイズという保険会社の本社である。十七世紀より始まるこの保険業の取引き市場であった「ザ・ルーム」という象徴的な場所を、ロジャースはアトリウムにして建物を縦に貫通し、垂直なルームに替えた。内部は一般に入れないが、外側をぐるりと一周するだけで、圧倒的な迫力は十分伝わってくる。
 十二層のオフィスの箱の周りを、六つのサテライト・タワーと呼ばれるサービス施設が囲んでいる。これは、メンテナンスの容易さと取り替え寿命を本体から切り離すといった効用も併せ持っている。また、ガラスのファザードは空気調節や照明と一体として考えられている。
 重厚な全体像とは別に、足下周りではケーブルワイヤーを多用した軽い表現を採っていて、そのコントラストも見事である。まさに、テクノロジーの可能性を追求した傑作であることに間違いない。
 この二十世紀を具現化したような建物を、チャールズ皇太子は「石油コンビナートみたいだ」といって批判する。つまり、周囲のシティの歴史的なコンテクストにふさわしくないと主張するのだ。さらに、「建物はコンピュータやワープロを収納できればよいのだから、それ自体を機械の形に見せる必要はないのである」とも言っている。これは、一般市民の意見にも共感を得ることの多い保守的な考えの一つだが、ロジャースはこう反論する。

 「…近隣の建築スタイルを模倣することでしか、周囲の文脈に添った調和は得られないという意見が大方を占めるけれども、私はそれに対して異なる視点を持つ。…異なる各時代を表現するそれぞれの建築を並存することでも調和と秩序は得られる。…」
 
 彼は、ケンブリッジのキングス・カレッジやベネチアのサン・マルコ広場の例を引いて、異時代の建築様式の並存の可能性を主張する。
 この議論に結論はない。後の歴史が判断することになるだろう。




リチャード・ロジャース

略歴
1933 イタリアのフィレンツェに生まれる。4歳の時イギリスに移住。
1961 イェ−ル大学大学院修士課程建築科修了。
1962 イギリスに戻り、スー・ロジャース、ノーマン&ウェンディ・フォスターと「チーム4」を設立。
1971 「ピアノ&ロジャース」設立。パリのポンピド−・センターの設計コンペに入選。
1985 RIBA(王立英国建築家協会)金賞受賞。
1997 英国女王よりロードの称号を受ける。

主要作品
1971-77 ポンピドー・センター(パリ)
1978-86 ロイズ・オブ・ロンドン(ロンドン)
1990-94 チャンネル4社屋ビル(ロンドン)
1989-95 ヨーロッパ人権裁判所(ストラスブール)
1996-99 ミレニアム・ドーム(ロンドン)

Web Site:Richard Rogers Partnership